-
NEOMの壮大なビジョンの中でTROJENAをどのように位置づけていますか?また、このプロジェクトの成功にTROJENAが不可欠である理由を説明していただけますか?
TROJENAはNEOM内にある、それぞれに特徴を持つ10ある地域の1つですが、多様な体験をご提供できるという点で他のプロジェクトとは少し異なっています。特に、山岳地帯の自然や環境は独特な生長を遂げていくでしょう。また、標高が高いため気候は大きく異なります。冬は雪に恵まれ、夏は他の地域に比べ10度ほど涼しくなります。
TROJENAが不可欠だと申し上げているのは、NEOMがご提供できるもの全てがここに集約されているためです。沿岸海浜開発や、車のない都市、自動化された港や空港につづくTHE LINEに至るまで、すべてが集約されています。さらに、多くの点で他にはない山岳開発として、居住者の皆様や観光客の皆様がご利用いただける100を超えるアクティビティをご提供する予定です。
-
チームが取り組んでいる世界初のプロジェクトについて説明していただけますか?
実に多様な体験ができるリゾートとなるでしょう。他のどのような山岳リゾートや観光地とも違います。ここの自然環境だけでなく、レクリエーションとしてのアクティビティ、スポーツ、体験の機会という点でも非常に特別な場所です。そうした点からはどこにも引けを取ることはないでしょう。
サウジアラビア初となる屋外スキーから、階層型ビレッジ「The Vault」に至るまで、他では見たことのないものばかりをご用意しています。「The Vault」に類似するようなものはこれまでに建設されたことがありません。
新たに湖も作りました。ダムのような従来型の建築物ではなく、船首を思わせる構造物を前面に備えています。その内部の建築空間と設計には目をみはるはずです。もちろん、山岳でコンサートを行うなど、人生を謳歌できるような体験もご用意しています。
加えて、皆様に喜んでいただけるものも取り揃えております。実に多様な住居、ホテル、さらには体験の機会をご提供し、あらゆる方にご満足いただけることを目指しています。富裕層の方々は誰にも邪魔されない、落ち着ける場所をお好みだと思いますが、アクティブに楽しめる場所もまた必要ではないでしょうか。自分にふさわしい文化とコミュニティがある、活気ある場所なのです。
-
TROJENAが目指しているのは、究極の新しい体験やビジョンということですが、それが何を意味し、どのように実現していくのかご説明いただけますか?
建築、体験、スポーツ、環境、気候、そして通年でのアトラクションを通じて、山岳リゾートの新しい基準を作り出すということも目指しています。新しい頂点を作るということです。世界中に素晴らしいリゾートはありますが、スポーツ、気候、自然、デザインなど、ここのスケールに匹敵するものはありません。比べるまでもないでしょう。
-
一流のウェルネスプログラムにはどのようなものが用意されていますか?また、どういった点に焦点を当てているのでしょうか?
健康とウェルネスに関する通常のプログラムと同様ではありますが、先端医療、リカバリー、トレーニング、改善とパフォーマンスといった点に着目して、通常のサービスをより強化したものになっています。
デジタル要素は「場の創造」の一端を担っています。通常、「場の創造」において、ブランド、デザイン、運営方法、提供されるサービスが重要な柱となります。
NEOMは、テクノロジーとデジタルを融合しており、その都市づくりは認知的アプローチに基づいています。つまり、お客様がいらっしゃる前にTROJENAが実際にどのようなものなのかをお示しするということです。デジタルツインテクノロジーを利用することで、バーチャル上にラグのないオンライン体験をリアルタイムに実現します。
-
学習と自己啓発という観点でお尋ねしますが、ここはリーダーが静養したり、幹部がトレーニングしたりする場にもなるのでしょうか?
15のホテルと3,600の客室をご用意しておりますが、それらはホスピタリティだけを目的にしたものではありません。リーダーの方が英気を養う場所として、あるいは会議を行う場所として、TROJENAをご利用いただくことができます。
ここには他のリゾートにはないものが数多くあります。基本計画を立ててから施設をそこかしこに並べ、イベントや体験プログラムを用意するわけではありません。お客様が成功をつかめる場所として機能することが重要であると考えています。キュレーションやブランディング、デザインやサービスの基準に至るまで、全体を高度に調和させることが大切なのです。それをすべてまとめ上げるのが当社の仕事です。
-
山腹にビレッジをつくるというのは新しいコンセプトだと思いますが、 「The Vault」とはどのようなものかもう少し詳しく教えていただけますか?
「The Vault」はNEOMのコンセプト全体を表しています。土地の95%が自然環境を保護するために確保されており、THE LINEのコンセプトとある面で似ています。土地全体に施設を点在させるよりも、階層型のビレッジあるいは都市を1か所に集中することで、土地の利用を最小限に抑え、非常に歩きやすい場所になっています。
The Vaultは当社にしか成し得ない事業の一つです。この素晴らしいデザインは、持続可能性、環境保全などのNEOMが重要視する原則を体現するものです。また、広大な土地に網目状に都市を建設し、移動に多くの時間を割かなければならない従来型のアプローチから脱却を目指します。
-
TROJENAが人を惹きつける理由は、美しい建築、自然の美しさ、これまでにないラグジュアリーを組み合わせたところにあると思います。なぜ誰もこうした事業に取り組んだことがなかったのでしょう?
山岳リゾートを当社のように開発することは至難の業だからだと思います。白紙の段階から何かを生み出すような機会はまずありませんが、それこそが当社が成し遂げていることなのです。仮に新たな山岳リゾートが作られるとしたら、当社と同じアプローチを取ることになるはずです。
そして、NEOMには 「新たな未来」 を目指すという目的があります。これこそが未来の姿だと言えるでしょう。TROJENAに新たなインフラを導入する機会を得ました。構築し、開発し、ゼロから場を作るためです。人々が暮らし、働き、遊びたくなるような場所です。私たちはこれまでにないユニークな考え方や物事を生み出してきましたが、過去からも学んできました。
-
どのような建築事務所がこのプロジェクトに参加していますか?
基本計画は、ドイツに拠点を置くデザイン会社Lava Architectureが作成し、The Vaultのアイデアを提案されました。その他に、湖のアイデアを提案したのは、オーストラリアのブリスベンを拠点にする建築事務所、Bureau Probertsです。また、ザハ・ハディド社には、他の建築デザインを考案してもらいました。
スキービレッジの担当には、香港を拠点とする建築事務所、Aedasを選出しました。UN Studioがゲレンデロッジなどの設計を担当します。Lavaが基本計画を管理しつつ、さまざまな建築家たちと協力して多様な設計やスタイルを採用しています。そのため、建築物や建築形態に豊かさが生まれています。
その他の開発が進むにつれて、さらに目にするものが増えてくるでしょう。もちろん、デザイナーたちと核となるポリシーを共有することが大切になります。とはいえ、Trojenaはきっと皆様に見事な建築物が織りなす景観を見せてくれるはずです。
-
計画されている先端技術を使った天文台について、もう少し教えていただけませんか?
この天文台はハイテク望遠鏡とデータを使った、天体観測ができるキャンプと言えるでしょう。ザハ・ハディド氏が提案した施設の一つです。澄んだ空と高い標高のおかげで、数々の惑星や天の川を見ることができます。これも全て素晴らしい建築物があるからこそ実現できたことです。日中でも宇宙や銀河について体験したり、学んだりすることができます。
標高が高ければ高いほど、空気がより澄みわたり、素晴らしい眺めへと変わっていきます。アカバ湾、そしてエジプトやNEOM全体を見渡すことができます。
-
富裕層向けリゾートや住宅については、世界中にあるその他のリゾートとどう違うのでしょうか?
これほど高い次元でさまざまな要素をまとめ上げ、リゾートづくりのあらゆる点に焦点を当てている場所は、世界を見渡してもそれほど多くはありません。その他の山岳リゾートや一般的な観光地とは一線を画すものとなるでしょう。
ほとんどのリゾートでは、ブランディングやマーケティングを担当するコンサルタント、あるいは施設の管理やすべてのイベントを担当するチームは開発終了間際になってようやく姿を現しますが、当社のコンサルタントやチームは開発当初からプロジェクトに参画しています。
これは素晴らしい場をつくる上で重要な要素となります。優れた場所を確保し、適切に設計することはできても、少しでも油断すれば本当に素晴らしいリゾートをつくり上げることはできなくなってしまうのです。環境が適切に維持されておらず、サービスレベルが貧弱な場合は特にそうです。一年を通じて24時間目を配り続けることが大切です。こうした積み重ねが、人々を惹きつけ、魅力的な場を生み出すことになるのです。そのため当社では、開発の初期段階から最後までプロセス全体について検討を重ねています。
-
TROJENAが旅行者、居住者、ビジネスパートナー、投資家を惹きつけているのはなぜでしょうか?
その組み合わせが理由だと思います。ただ単にデザインがあるというのではなく、運営方法、イベントプログラムのあり方、優れたデザインを組み合わせることが重要なのです。お客様に何か売るのではなく、お客様に「ここにいたい」と思っていただくのです。
これがすべてです。しかし、ここの気候が大きな役割を果たすことになるはずです。というのも、気候は空気の質に大きな違いをもたらしまし、素晴らしい山の景観などに影響を与えるからです。観光、生活、仕事、娯楽に関わってきます。
世界には素晴らしい場所がたくさんありますが、もっと素晴らしいことに挑戦する機会があります。ここでできることの幅広さや環境は、他の場所では手に入りません。運営方法、デザイン、ブランド、管理方法なども、差別化を図る重要な点となっています。
-
NEOMの他の地域や都市とはどのようにつながっているのでしょうか?
環境に配慮した、持続可能なエネルギーを利用した自動車やケーブルカーを走らせ、お客様を目的地まで連れていけるようになります。
空港へのアクセスを整備し、目的地へ速やかに到着できるように協議している最中です。空港やドローン用ポートを設置する予定です。
利用できる最新の交通システムが何であれ、先進交通システムを目指すNEOMのアプローチに変わりはありません。これにより、移動時間を最小限に抑えることができます。THE LINE(高速鉄道路線)を利用すれば、空港からの距離がグッと縮まり、TROJENAまでお客様をお待たせすることがありません。
-
NEOMでは、TROJENA周辺の歴史的レガシーや野生生物をどのように保護するのでしょうか?
私たちが自然保護区に囲まれることの重要な点の一つは、私たちがそれを利用し、下支えすることができることです。
しかし、何よりもまず、開発と建設が行われている期間では、私たちの行動に目を配り、自然保護区への介入には細心の注意を払わなければなりません。こうした環境に新しい道路を切り開いてしまえば、修復はできませんから。
当社では動植物に囲まれる価値を実感していただくアプローチをとっています。自然環境を尊重し、価値を生み出すものとして扱わなければなりません。
-
ホテル、ホスピタリティ、またはその他のビジネスパートナーが参加しているのでしょうか?それともまだこれからなのでしょうか?
当社は間もなく最初のホテル運営事業者を指名します。スキービレッジのデザインにはAedasを指名しており、その第一段階として2つのホテルが建設されています。ホテル運営事業者や当社が築くブランドに合致するように、ふさわしいホスピタリティブランドとデザインを建物の中に取り込まなければなりません。The Vaultホテル運営事業者との対話が進んでいるところです。
-
TROJENAの最上部にある人工湖まで水を汲み上げることは可能なのでしょうか?技術的には大変難しいように思うのですが。
すでに相当量の水を引き上げましたが、直径1メートルもある給水管を利用したためです。海から運ばれる脱塩水も利用しています。湖の正面にある船首のような構造物は、大きな梁が飛び出すようにデザインされており、その内部は空洞になっています。その表面に深さ約5メートルの湖が作られ、その船首の中にお客様が暮らすことになります。川床から船首部までの高さは約150メートルありますが、フーバーダムの高さ約170メートルと比較しても大きな造りだということが分かります。ご質問への回答は「可能」ということになりますが、当社が計画していることは、「限界への挑戦」です。これまで試されたことのない技術を使っている、ということではありません。人里離れた地域に大規模施設を建設しているものの、それを実現するために必要な技術は確かなものであるということです。
ひとつ言えることは、山腹から慎重に掘り出された土砂等はすべて破砕され、ダム建設材としてリサイクルされます。何トンもの建築資材を運搬する必要はないということです。湖、弓型構造物、ダム、「The Vault」はそれぞれ相互につながっており、互いにメリットを与えあう関係性を構築しています。
-
TROJENAによって後世に残したいレガシーは何なのでしょうか?
あるレガシーは、NEOMの原則を物語っていると考えています。つまり、成長し続ける未来のために何かを創造する、ということです。当社には120万平方メートルに及ぶ基本計画があります。TROJENA地域にはさらなる発展の可能性があることを当社は理解しており、ある意味では、当社はただやるべきことを実行しているだけと言えるでしょう。
しかしこのTROJENAに建造されるレガシーは、人々が望む素晴らしい場所になるでしょう。それこそが成功の証です。TROJENAが成長し、進化し続けることができるように、開発段階を終えて未来を実現し、未来に生き続けることができるものを作ろうとしているのです。
-
ご自身のプロフィールや経歴についてもう少し教えていただけますか?
職業は公認建築士です。中東やサウジアラビアで働くのは初めてですが、不動産の開発や再生に携わった経験は32年に及びます。私は開発マネージャー兼開発コンサルタントとして、約20年間あるプロジェクトを担当し、その後ロンドンのバタシー発電所で最高執行責任者として9年間過ごしました。800万平方フィートの基本計画の立案から建設に至るまでチームの一員として貢献しました。Trojenaチームに入る3年前、私はロンドンの金融街にあるCanary Wharf Groupで開発担当のマネージングディレクターを務めていました。
-
NEOMでの日常生活はどのようなものですか?
きめ細やかなサポートを受けられます。最も優れている点は、ここに暮らす、さまざまな国籍の人たち、つまり、多様性です。幅広いスキルや専門知識を持つ一流の人たちと一緒に仕事すると、本当に刺激を受けます。
-
サウジアラビアでこのプロジェクトに参加した決め手は何でしたか?
これまでとは違うことをする機会が理由です。ここにいる多くの人たちと同じように、第一人者となり、開拓者精神を持つことが大好きです。その点に惹かれました。さらに、不動産や建設業で働く喜びは、功績を残せるということにあります。自分が作った場所を見ることができるというのも魅力の一つです。