THE LINE:究極のサイドスクレーパーにより、垂直型アーバニズムを次の水準へと引き上げる
多目的ビルは1960年代以降その可能性を示唆してきましたが、NEOMはその直線型都市でその有用性を実現しようとしています。美しい紅海沿岸から壮大な砂漠を通り抜けサウジアラビアの雄大な山々まで一直線に走り、暮らしのあらゆるニーズを170kmある構造物の中に収めます。
私たちのほとんどは水平な世界に暮らしていますが、これではスペースを最適に使うことができていません。すでに逼迫している地球資源を最も生産的または効率的に使用する方法でもありません。都市の多目的ビルに住んでいる人なら、住宅、オフィス、小売店、医療、教育、スポーツ、娯楽施設が同じエリアにあることの利便性を証明してくれるでしょう。
未来基準のアプローチ
これはすべて、1969年にシカゴのジョンハンコックタワーから始まり、ドバイのブルジュハリファまで長い間続きました。ところが、当初想定されていた有用性は果たされませんでした。加えて、安全に登れる高さに物理的な限界がある従来の超高層ビルではおそらくそうした有用性の実現は不可能でしょう。
世界では大規模都市化がまさに始まろうとする時期にあって新たなソリューションが求められています。ロンドン、ニューヨーク、バルセロナなどの都市がますます拡大し、二酸化炭素排出量を増やし、緑地帯を破壊することは許されません。現在から2030年までの間に、10億人を超える人々が農村部から都市部に移動すると予測されています。世界最大規模の各都市には、それぞれ5,000万人が住むことになるでしょう。今世紀の終わりまでに、さらに45億人の人間が都市に住まうことになります。都市のハニーポット効果は数十年前に始まり、現在は驚くべき速さで増大しています。
高さ500メートル、幅200メートルの建物内に都市全体が存在し、サウジアラビア北東部の沿岸、砂漠、山々に170キロメートルにわたって広がっていると想像してみてください。34平方キロメートル以内に900万人が住む場所です。それこそが究極のサイドスクレーパーであるTHE LINEで構築しているものであり、完全な垂直型アーバニズムを実現します。たとえば、居住者は50階に住み、エレベーターで20階に降りて、レストラン、ホテル、または歯科医に行くことができます。または、横へ移動してオフィス、大学、またはサッカーの試合に向かうこともできます。すべて家から数分以内の距離にあります。
より良い暮らし方
THE LINEは暮らしに別の次元を加えるようなものとなるでしょう。同時に長時間の通勤、都市の無秩序な広がり、二酸化炭素排出に対処していきます。特にTHE LINEでは自動車を使用せず、再生可能エネルギーのみで運営が行われます。私たちは、世界の社会、経済、環境問題の多くを一度に解決するという非常に高い目標を掲げています。これらの問題には、都市の混雑、公害、不平等などがあります。
スマートで責任ある開発により、これらすべての問題に対処できます。私たちは「可能な限り狭い敷地面積で都市を構築するにはどうすればよいか?」という問題に回答しました。サウジアラビアの人口が今後30年間で3倍になる可能性があることを考慮すれば、これは重要な問題です。
自然など、THE LINEでは必要なものはすべて徒歩5分以内の距離にあります。建物を出る必要はありませんが、建物の外にあるビーチ、砂漠、山へと出かけるということもあるでしょう。言うまでもなく国際空港もあります。世界のどこへでも素早く向かうこともできますし、クラス最高のカスタマーエクスペリエンスを体験できます。さらに、秘密のマリーナがあります。クルーズ船に飛び乗ったり、Sindalahなどの素晴らしい島へちょっとしたボート旅行に出かけることができます。それに加えて、誰もが自然の景色を眺め、同じシェアードサービスにアクセスできます。収入で制限されることはありません。
歴史から学ぶ
しかし、高層ビルには暗い歴史があることは誰もが知っています。私たちは、ベストプラクティスだけでなく、負の側面からも教訓を得なければなりません。ヨーロッパの公営住宅団地とアメリカのプロジェクトは壊滅的な失敗に終わり、犯罪が蔓延する荒廃した場所になりました。建物の品質、社会経済的問題、そしてオフィス、病院、学校、レジャー施設のない無菌環境であったという事実がすべての原因でした。
睡眠以外に必要なことはすべてこうした住宅を離れて別の場所に移動する必要がありました。公営住宅が都市中心部から離れた所にあることを踏まえると、理想的な方法とは言えません。こうしたアンバランスによって、都市の無秩序な広がり、混雑、汚染が永く続くことになったのです。悪循環であり、変化が必要です。こうしたモデルは決してうまくいかなかったものの、戦後の劣悪なスラムから人々を移して定住させる必要があったために試みとして行わざるを得ませんでした。
都心部の高級高層ビルであっても順調ではありません。オフィススペースが多くを占めており、そこで働く人々は郊外へと帰るため、夜になると都心部は人がほとんどいない状況になります。毎日、こうした不要な大人数の移動が生じており、人と地球のエネルギーを消耗させています。私たちが種としてただ生き残るのではなく、繁栄するためには、建物は昼夜を問わず機能する必要があるのです。
THE LINEでは、同じモジュール(80,000人のコミュニティ)の中で暮らし、働き、遊ぶことができます。5分で中を移動できる保護区画があり、その中には暮らしに必要となる可能性のあるすべてが存在しています。その着想は、人の体験を制限することではなく、より多くの時間を解放することです。つまり、家族との時間、趣味、学習などの重要なことに時間を使うということです。
空港、ウォーターパーク、あるいはスポーツイベントに行くときは移動する必要があるかもしれませんが、比較的短距離の移動になるでしょう。170キロメートルあるTHE LINEを端から端まで移動するには、高速鉄道でわずか20分しかかかりません。ある意味ではユートピアでと言えるでしょう。気候は素晴らしく、海が近くにあります。公園内に構築された都市の周囲には壮大な自然が広がります。まさに地球上で最高のライフスタイルとなるでしょう。
グランドデザイン
建築学見地から否定する人たちは、建築不可能な絵空事だと言うかもしれません。しかし、THE LINEはデジタルツインテクノロジーにより事前にモデル化されたモジュラー技術を活用する、現場組み立て式の巨大なレゴみたいなものです。あらゆるものがプレハブ化、標準化され、完全に形成された状態で存在するため、基本的には互いに固定されます。たとえば、壁はプラグ、幅木が設置され、表面処理が施された状態で届きます。建設業は林業に次いで2番目に危険な産業であるため、オフサイトの近くにある工場で建設し、ここですぐに組み立てられるようにすることは、多くの段階で理にかなっています。500,000人もの人たちがこのプロジェクトに従事している事実があるとしても、1人として死亡者を出したくはないのです。
私たちの都市は、先ほど述べたデジタルツインアルゴリズムに基づくインテリジェントなデザインと完全なデータドリブンを活用して構築されるため、後になってソリューションを改良する必要はありません。悲しいことに現在はそうしたことが他のすべてのグローバル都市で起こっています。実例を挙げれば、公園を設計する場合、目的地までの最短経路をたどるために芝生の上を歩かざるを得ないものになるでしょう。
THE LINEは始まりに過ぎないかもしれません。建物内に水族館、あるいはひょっとしたら、ゴルフコースすらも登場するかもしれません。
私たちがここで行っているのは、持続可能性、経済成長、自然の再生の観点から意義があればすべてを検討の対象にする活気ある実験室を作ることです。オーストラリアのキャンベラとブラジルのブラジリアは計画都市を作る試みが行われました。しかし80年後、キャンベラの人口はわずか40万人にとどまり、ブラジリアはその約束を果たすことができていません。将来の大規模都市化に対応するには、アプローチとデザインをより大胆に行う必要があります。ここNEOMではその事業に対する意欲に満ち溢れています。それしたすべての大規模都市化の中で最も壮大なデザインを描くことになります。
ジャイルズ・ペンドルトンはTHE LINEのエグゼクティブディレクターであり、世界中の建設業界で20年以上従事してきました。